今回のクイック税務は”インボイス制度”についてです。きちんと理解して考えを深めましょう!
今月のケース
インボイス制度の準備は進んでいますか その②
前回のクイック税務では、インボイス制度の基本を振り返りながら、売手の場合の進捗を確認して参りましたが、今回は買手の場合を取り上げてみます。
買手の場合
(1)簡易課税制度の検討
免税事業者が課税事業者となった場合には、消費税の納税計算が必要となります。これまでよりも事務負担が増えるため、売上だけで納める消費税額が計算できる「簡易課税制度」 の適用を検討しましょう。
なお、「簡易課税制度」を適用する場合は支払関係のインボイスの保存が不要となるため、以下の 検討は不要です。
(2)免税事業者への対応
インボイスの交付が依頼できない免税事業者との取引について、見直すか否かの検討は済 んでいますか。独占禁止法等の観点から、一方的な通告は禁止されています。交渉の際にはご注意ください。
(3)インボイスが必要な取引を抽出
3万円未満の自動販売機による飲料購入や公共交通機関の切符購入など、インボイスが不 要な取引を除き、原則としてインボイスの保存が必要となります。
ただし、基準期間(個人は前々年・法人は 前々事業年度)における課税売上高が1億円以 下等一定の事業者は、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの期間、税込1万円未満の少額取引について、インボイスの保存を不要とする特例があります。
このように、インボイスが必要な取引と不要な取引とが混在します。インボイスが必要な取 引を抽出し、どのようなインボイスの交付を受けるのか、事前に確認しておきましょう。
その際、インボイスが確実に経理担当者へ渡るよう、社内の流れもしっかり確認しておくと、開始後の混乱が防止できます。
(4)書類の保存方法等の検討
インボイス制度開始後、消費税の計算にお いては、以下の3つの書類に大別されます。
① インボイス
② 区分記載請求書
(免税事業者からの課税仕入に係る経過措置(80%・50%控除)の適用を受ける場合)
③ 上記以外
これらをどのような形式で受け取り、どう保存するのか、電子帳簿保存法の適用も踏まえて 検討されるとよいでしょう。
(5)納税計算
仕入に係る消費税額を計算する方法も、割戻し計算と積上げ計算があります。
主なチェックポイント
□ 簡易課税制度の適用を検討したか
ー 以下は、簡易課税制度を選択しなかった場合 ー
□ 免税事業者に対する交渉は完了しているか
□ インボイスが必要な取引を抽出し、どの書類がインボイスに該当するか、社内の流れも確認したか
□ 書類の保存方法等を検討し、準備は行ったか
□ 仕入れに係る消費税額の計算方法を決めたか
なお、免税事業者が適格請求書発行事業者の登録を受けて、登録日から課税事業者となる など一定の事業者は、最長約3年の間、消費税の納税額を売上に係る消費税額の2割とすることができる特例措置があります。この特例は 事前の届出が不要で、申告の際に選択する旨を申告書に付記することで適用できます。この点も、あわせてご確認ください。
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